行政書士 齋藤
お父さんから代替わりにするにあたって、建設業許可を息子さんに引き継がせるにはいくつかのパターンが考えられますが、いずれにしても息子さんが事業主となった体制においても許可の条件を満たしていると役所に認めてもらわなければいけません。通常の許可取得と同じく、やはり経営の経験と資格か実務経験が大切となってきます。
1.経営経験
息子さんは事業主ではないので事業主としての経営経験は積んでいません。しかし、お父さんの下で経営を補佐しているケースが多いでしょうから、建設業の経営を補佐していた経験が6年以上あれば、息子さんの代になっても経営経験を満たすことは可能です。
そして、6年以上補佐していたと認めてもらうために通常は、お父さんの確定申告書(事業専従者欄に息子さんの名前があること)6年分で示します。なお、お父さんと息子さんが同一世帯でない場合は事業専従者にはなれないのですが、従業員として給料は払っているはずですので終始内訳書や青色申告決算書の給料賃金の内訳欄にて息子さんに給料を払っていたことを示します。
すでに書類を紛失してしまったという場合は、税務署に開示請求をかけて、過去に提出した書類のコピーを入手してください。
なお、経営経験については最終手段として、お父さんを息子さんの支配人(事業の代理人)とすることでお父さんを経営の責任者とすることもできます。ずっと許可を維持してきたお父さんであれば、経営の経験を改めて証明することは建設業に関するあらゆる書類を処分していない限りは何とかなるでしょう。
2.実務経験や資格
許可を維持できるだけの資格を息子さんが所持していれば問題ありませんし、息子さんが持っていなくてもお父さんを従業員とすればお父さんの資格であらためて許可を取ることは可能なので資格を誰かが持っている場合は、とりあえず許可を引き継ぐ際に問題は生じづらいです。
問題が起きる可能性があるとすれば誰も資格を持っておらず、実務経験で何とかする場合です。実務経験は役所の解釈が変わったりすることもありますので、不思議な話ですが、お父さんの代では許可が取れていたのに、息子さんの代では許可が取れないという現象が生じることも考えられます。
例として、山形県ではある時期から基本的に下請け工事は建築一式工事として認めなくなりました。お父さんの代では下請け工事も含めて許可を取ることができたが、息子さんの代では許可を取ることができなかったということが起きています。実務経験はその時の役所の取り扱いに左右される可能性があるので、できれば代替わりに備えて資格を取得しておけると一番良いでしょう。